【金本位制と管理通貨制度】

経済分野

どうもminiいけ先生です。
今回は金本位制度と管理通貨制度について考えていきたいと思います。

現在の日本経済では円である紙幣や硬貨が決済手段になっています。
通貨というのは「信じること」で成り立つというのは経済分野の最初の記事でも紹介しました。

今回は通貨制度について考えていきたいと思います。

この記事でわかること

①金本位制(金兌換制度)
②管理通貨制度
金・ドル本位制
④電子マネー

解説動画はこちら
【金本位制?管理通貨制?インフレ?デフレ?】
【IMF-GATT体制】

金本位制とは?

急に「紙切れ」を信じろと言われましても…
というこの人の意見も分からなくもないです。それまで信じられていなかったものを、突如明日から信じろと言われて困りますね。

人類は歴史上、希少性の高い金・銀・銅などを通貨として使用してきました。
特に金(GOLD)は50mプールの約2杯分しか採掘されておらず希少価値が高いものでした。そこで通貨の価値をそれまで価値のあった金との交換で保証する制度が考え出されたのです。

これが金本位制です。
金の価値に信用の基礎をおいて、金との交換を約束することで紙幣に価値が生まれました。
金と交換可能な紙幣のことを兌換紙幣というので、金本位制は別名「金兌換制度」ともいいます。

通貨と金の交換比率は「金平価」といいます。
金貨の重さを計量するときには「オンス」という単位が使われることが多いです。
1オンスは31.1035グラムです。
戦後は1オンス35ドルという固定価格でドルと金の交換を認めることで通貨体制は維持されていました。

金本位制のもとでは、一国が発行できる通貨の量の基準は保有する金の量に拘束されます。その国が持つ金の量と通貨の量がイコールになるという状態です。

<金本位制のメリット>
みんなが価値を認める金と紙切れである紙幣が交換できるので紙幣の価値が安定することが挙げられます。
<金本位制のデメリット>
保有する金が不足すると通貨を発行できないことです。不況に陥ったときに金を持っていなかったら通貨が発行できないので、市場の通貨量が増えずに不況からなかなか脱出することができません。

管理通貨制度とは?

もともとは世界経済のスタンダードとして金本位制採用されていました。

しかし、1929年の世界恐慌で各国が不況にあえぐ中で1931年にドイツが金の輸出を禁止して金本位制から離脱しました。
イギリスは1931年に、アメリカは1933年に、イタリアは1934年に、最後まで粘っていたフランスも1936年に金本位制から離脱していきました。

「有事の金」という言葉があります。戦争や感染症の拡大など不測の事態のときに紙切れになるおそれのある通貨・株式・債券よりも、現物に裏打ちされた金の価値は下がりにくく、非常時に強いという意味です。

①不況から脱するために紙幣をたくさん発行したい
②GOLDの保有量を確保しておきたい

と考えた各国は相次いで金本位制から離脱したのです。

各国は中央銀行の独自の判断で金の保有量に関係なく、通貨を発行できる管理通貨制度を導入しました。
法によって強制的に通用力を持たせた紙幣、これを兌換紙幣に対して不換紙幣といいます。(国定信用貨幣説についての詳細はこちら)
金自体は1つの商品になりました。

<管理通貨制度のメリット>
通貨量が調節しやすいため、不況時に金融政策を講じやすくなる。
<管理通貨制度のデメリット>
通貨の発行量が増えすぎるとインフレ(通貨の価値が下がり、物価が上昇)を招きやすくなる。

世界恐慌以降の不況からの脱出するために、各国は自国の利益を優先して紙幣を過剰に発行しました。
過剰に発行される紙幣の価値は失われていきます。
(紙幣の信用についての詳細はこちら)

金という絶対的なモノサシを失った各国はもはや他国通貨を受け取ること自体が怖くなり、共通通貨を使う自国と植民地で行われる排他的な貿易を行うブロック経済・保護貿易へ突入していきました。

経済圏を持つものと持たざるもので対立が激しくなったことが、第二次世界大戦の要因になったとも考えられています。

金・ドル本位制

通貨問題から第二次世界大戦になった反省を踏まえて、1944年のブレトンウッズ協定では為替の安定化が議題になりました。

そこで戦勝国になったアメリカは、米ドルを基軸通貨とした「金・ドル本位制」を導入します。

この制度では、日本円を持っている人がGOLDがほしいと思ったときに、円でGOLDに変えることができません。
いったんドルに換えてからでないとGOLDを手に入れることはできないのです。
この制度は、アメリカが世界の75%の金を保有していたからこそ導入できたものでした。

さらに通貨価値の混乱を避けるために、ドルと他の通貨の価値をガチガチに固定した固定為替相場制も同時に採用されました。

ドルを中心に2.8ドル=1ポンド(イギリス)、1ドル=4.2マルク(ドイツ)、1ドル=360円(日本)の固定為替が決定しました。

金・ドル本位制から管理通貨制度へ

第二次世界大戦後は金・ドル本位制の固定為替相場制で経済システムがスタートしたのですが、長くは続きません。

冷戦期にアメリカがマーシャルプラン(西欧諸国への経済援助)やベトナム戦争でドルが大量に発行したことがシステム崩壊の原因です。

アメリカが金の保有量以上に通貨をを発行しすぎたため、米ドルの信用が揺らいだわけです。これをドル危機といいます。

当時の基軸通貨であるドルは金と交換できてこそ価値があるのです。
それが、金と交換できないかもとなるとその信用は失墜します。

各国がドルを売り、GOLDを購入しだすとアメリカからは大量にGOLDが流出していきます。
アメリカ自身が保有する金の量が減ってしまうと「金・ドル本位制」自体が成り立たなくなってしまいます。
そして何より、世界の覇者であるアメリカがGOLDを持たないということはアメリカ自身が許せないことなのです。

そこで1971年、当時のアメリカ大統領ニクソンは唐突に
「金とドルの交換を停止する!」という衝撃発言をしました。
戦後始まった経済体制がひっくり返されるわけですからそのショック・衝撃ったらないですよね。
これがニクソン・ショックです。

このニクソン・ショックからしばらくして、再び通貨自体に価値があるという管理通貨制度が導入されていきます。

ということで、現在は…

金との交換を約束しない、強制通用力を持たせた紙幣である不換紙幣を使用する管理通貨制度

という制度のもとグローバルに経済が展開されいているのです。

電子マネーとは?

通貨は4つの役割があります。(お金の役割についての詳細はこちら)

  1. 価値尺度
  2. 交換手段
  3. 支払手段
  4. 価値貯蔵手段

電子マネーは、金銭的な価値を持つ電子データのことで、支払手段(決済手段)として用いることができます。

カードや携帯電話(スマホ)に埋め込まれたICチップやQRコード上に金額を示す電子データが記録されています。これを機器やバーコードにかざすだけで決済が簡単にできます。

もちろん管理通貨制度のもとで経済は展開されているので、この電子データはその国の通貨の金額です。
仮想通貨とは異なるので注意して下さい。

日本の電子マネーは、鉄道会社が発行するSuicaやPASMO、ICOCAなどの交通系、小売流通企業が発行するnanacoやWAONなどの流通系が普及しています。
QRコード決済にはLINEや楽天、ソフトバンクなどが進出しています。

このように、ITを使った新しい金融サービスのことを、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を合わせてフィンテックといいます。

フィンテックの普及によって貨幣での決済は減少傾向にあります。

支払いやお金の貸し借り、資産運用などの金融サービスを電子化することで利用者・金融機関のコストが大幅に削減できますし、手続きも非常に簡単になるためこれからの金融サービスの在り方は大きく変わってくると考えられています。

日本でのキャッシュレス決済状況は2018年時点で24.2%です。キャッシュレス決済が浸透してきてはいますが、世界と比べるとまだまだなのがグラフを見れば分かります(一般社団法人キャッシュレス推進協議会,『主要国のキャッシュレス決済比率』より引用)。

韓国や中国ではキャッシュレス決済が進んでいます。
訪日客が増加し、消費が急増していくなかで購買データの利用、新しいマーケットの開拓を期待して、経済産業省もキャッシュレス決済比率を2025年に40%に高めることを目標にしています。

一方で「Alipay」などスマホ決済が加速する中国では、個人の信用度診断や生活・購買の監視に利用されている面もあり、格差拡大・プライバシーの侵害など人権抑圧の懸念もあります。

※キャッシュレス決済状況グラフは明治大学の2021年全学部日程で問われているのでじっくり見ておきましょう。

以上今回の記事はここまで!

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