【カルテル・トラスト・コングロマリット・コンツェルン】

経済分野

どうもminiいけ先生です。

カルテル・トラスト・コングロマリット・コンツェルンってどのような違いがあるの?

区別がついていない人が多いのではないでしょうか。

実は、寡占市場において同一産業か、そうでないかが重要だということを知っていましたか?

寡占市場・独占市場は出題されると得点源になる分野です。

この記事では、「寡占市場・独占市場」の特徴について解説します。

この記事を読むと受験生は得すること間違いなしです。

今回の記事でわかること

  1. 独占市場について
  2. 寡占市場について
  3. 規模の経済(スケール・メリット)
  4. 非価格競争
  5. カルテル(企業連合)
  6. トラスト(企業合同)
  7. コングロマリット(複合企業)
  8. コンツェルン(企業連携)
  9. 独占禁止法について

解説動画はこちら

独占市場

独占市場は、ある商品の市場を一社の企業が占めている状態です。

「一社の独占」はマーケットシェアが100%ということです。

独占市場はその一社に価格決定権があり、競争原理が働かないので、買い手は価格における恩恵をほとんど受けません。

独占市場は、完全競争市場ではないため「市場の失敗」といえます。

日本では電気通信は公営の日本電信電話公社(電電公社)が独占していましたが、中曽根康弘内閣のもと1985年電気通信事業法が制定され民営化されました。

電電公社がNTTに民営化され、参入規制が撤廃されたことで、競争原理が働くようになり通信費が安くなった例もあります。

寡占市場

寡占市場の「寡」という字は読み方がわからない人も多そうです。

寡占「かせん」と読みます。

「募」や「暮」など似たような字も多いですので、漢字ミスには注意しましょう。

寡占は「少数の」という意味です。

寡占市場は、ある商品の市場を少数の企業が占めている状態のことを指します。

たとえば日本の市場でいうとビール業界は寡占です。

アサヒ・キリン・サントリー・サッポロで寡占状態。

他にも、携帯通信業界も寡占状態です。

2021年2月段階ではNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社のシェア率が依然として高い状況です。

規模の経済(スケール・メリット)

独占市場や寡占市場では、企業は生産を集中させることができます。

生産の規模を拡大することにより生産品1単位あたりの費用が節約され、収益が次第に増加する傾向がみられます。

企業規模が大きくなればなるほど、生産コストが低下して収益も増加するということでメリットしかないですよね。

これを規模の経済(規模の利益、スケール・メリット)といいます。

寡占市場では非価格競争に

私企業の目的は、利潤の最大化です。

潰し合うことが目的ではないので、寡占市場の場合は価格競争が起きにくくなります。

寡占市場の企業たちは価格で競争するのではなく、広告や宣伝などのイメージ戦略や製品の差別化など、いわゆる非価格競争を展開します。

日産自動車・イオン・リクルート・サントリーなどが広告に多額の資金を振り向けています。

それぞれ寡占市場でしのぎを削っている企業ばかりです。

こういったことからも寡占市場では非価格競争が展開されいてるのが分かりますね。

続いては、寡占市場で起きる市場形態についてみていきましょう。

カルテル(企業連合)

まずはカルテル(企業連合)についてみていきましょう。

私立大学の入試では「企業連合」の方が問われることもあるので注意しておいて下さい。

カルテルは「同一産業においての協定」のことです。

同じ産業のA社・B社・C社が協定を組むということです。

たとえば、価格を上げるために結ぶ価格カルテルや、供給量を統一して希少性を保つために結ぶ生産量カルテル、顧客争奪の禁止や取引先の登録を行う販路カルテルなどがあります。

どれも競争を排除することで市場を支配しようとする仕組みです。

カルテルの具体例で新聞業界を挙げておきましょう。

読売新聞・朝日新聞・毎日新聞はカルテルといえます。

新聞は特殊指定によって原則として定価販売が強いられるので、「別にカルテルやってもいいよ」となっています。

ちなみにですが、2021年のデータだと新聞発行部数首位の読売新聞は約715万部、朝日新聞は475万部、毎日新聞は200万部となっています。

次いで政治・経済に特化した日経新聞は188万部で、産経新聞が121万部となっています。

アメリカの有名な新聞である「NYタイムズ」で48万部、「ウォール・ストリート・ジャーナル」で101万部ですから、日本は新聞大国なんです。

日本の大手新聞会社の新聞は1部120円という価格だったのですが、新聞の売り上げが少なくなっていることなどを理由に朝日新聞が最初に120円から150円へ値上げしました。

それに追随するかたちで読売新聞も150円へ、毎日新聞も150円へ値上げしています。

まさに価格カルテルの典型例ですね。

プライスリーダーが価格を設定し、他の少数の企業が暗黙のうちにその価格に従うという状況です。

この場合、言い出しっぺは朝日新聞なので、朝日新聞がプライスリーダーとなります。

値上げした価格(150円)は管理価格といわれます。

このように寡占市場では、企業間で利益を損なうような価格競争は行われず、価格が下がりにくいという傾向があります。

これを「価格の下方硬直性」といいます。

トラスト(企業合同)

次はトラスト(企業合同)についてみていきましょう。

トラストは「同業種、同一産業においての合併」を指します。

先ほど紹介したカルテルは同一産業においての「協定」でしたね。

今回のトラストも「同一産業」というのは変わらないんですが、「合併」という点が異なります。

この合併の目的は市場を支配することであり、一つの新しい企業になることを指します。

トラストの具体例は、銀行業界が挙げられます。

UFJ銀行と東京三菱銀行は同じ金融機関という業種でしたが、合併して三菱東京UFJ銀行(2022年現在の三菱UFJ銀行)になり、メガバンクになりました。

他にもさくら銀行と住友銀行が合併して三井住友銀行になり、こちらもメガバンクの一員となっています。

同じ産業の会社で合併することによって、自社の弱みを補えるというメリットがありますし、市場を支配するには有効な手段となります。

コングロマリット(複合企業)

続いてコングロマリット(複合企業)についてみていきましょう。

コングロマリットとトラストの違いは明確に区別しておきましょう!

コングロマリットはトラストと同じで「合併」なのですが、「異業種においての合併」を指します。

同一業種・同一産業の合併はトラスト、異業種においての合併はコングロマリットになります。

コングロマリットは事業の多角化を目的に形成された企業複合体のことをいいます。

具体例でいえば楽天グループです。

楽天グループは商品販売もあれば、証券・銀行もあれば、エナジー、リサーチ、モバイルとその業種は多岐にわたっています。

これぞまさにコングロマリットとして拡大していった企業の典型例といえます。

コンツェルン(企業連携)

最後にコンツェルン(企業連携)についてみていきましょう。

コンツェルンは市場支配を狙った独占形態のことです。

コングロマリットとはまた違った形をしていますね。

親会社があって、A社・B社・C社の子会社があり、a社・b社・c社の孫会社があります。

親会社は子会社の株を持っているだけで、財やサービスを生産しません。

株だけで多くの産業支配をするので、この親会社のことを「持株会社」といいます。

コンツェルンは持株会社をトップとした大きな企業連携であるということです。

具体例でいえば、戦前の十五財閥がこれに該当します。

三井・三菱・住友・安田・鮎川・浅野・古河・大倉・中島・野村・渋沢・神戸川崎・理研・日窒・日曹を合わせて十五財閥といいます。

戦後にマッカーサーが「軍国主義の経済的背景には財閥がある!富を独占しているという現状を変えるべきだ!」との考えで、財閥解体がなされます。

戦後に十五財閥の資産が凍結され、持株会社整理委員会というのが発足して財閥が所有する株式などを一斉に売り出して「株式の民主化」がなされたんです。

独占禁止法と公正取引委員会

1947年に独占禁止法(略して独禁法)が制定されました。

この独占禁止法は、国民経済の民主的で健全な発達を目的として制定されたものです。

3つの経済主体のなかで家計は価格決定権がなく、他の経済主体に比べて弱者になります。

経済的な弱者に当たる家計を守るために、独占禁止法を制定し、企業が結託して決定した不当な価格設定から守ろうということです。

健全な市場発達のためには、企業間の競争が必要です。

独占禁止法では競争が起きない寡占市場の典型であるカルテル・トラスト・コンツェルンは禁止されます

独占禁止法を制定することによって、価格の下方硬直性を防ぎ、公平な自由競争を妨げないようにしようということです。

市場で公平な競争ができているか、独占や寡占をしていないか、カルテル・トラスト・コンツェルンを形成していないかを監視しているのが公正取引委員会という行政委員会です。

さらに、過度経済力集中排除法を1947年に制定されました。

この法律で持株会社整理委員会が設置され、巨大独占企業の分割をしたり、規模を縮小させたりしたんです。

いわゆる財閥解体のスタートです。

対象となった企業が325社あったのですが、実際に分割されたのはたった11社でした。

11社には日本製鉄会社や王子製紙、三菱重工などの有名企業が含まれていたのですが、銀行が含まれておらず、財閥解体は徹底されませんでした。

そのため、戦後の日本では銀行中心の企業集団が形成されました。

こちらが企業集団の形成の一覧表です。

銀行を中心としてみずほグループ・三井住友グループ・三菱UFJグループが形成されています。

かつて大企業は住友・三菱・三井など旧財閥系を中心に6つの企業グループに固まって、密接な関係を形成していました。

これを解体しようとした財閥解体も不完全に終わり、結局は金融を中心にグループが形成されたというのが分かりますね。

独占禁止法の緩和に注目

さて、独占禁止法は基本的に家計を守るために制定されたのですが、不景気などで企業が弱った場合は独禁法を緩和します。

独占禁止法は時代によって何度も改正されていますが、緩和されたのは過去2回だけです。

一回目の緩和は1953年です。朝鮮特需後に不況が訪れ、弱体化した日本企業を守るために緩和しました。

緩和する内容は以下の2点です。

  1. カルテルを例外的に容認する
  2. 再販売価格維持制度の導入

独占禁止法はカルテル・トラスト・コンツェルンが禁止されていましたが、1953年の改正では「商品の価格がその平均生産費を下回り、商品を生産する事業の継続が困難となるおそれのある場合」生産量カルテルや販路カルテルが認められました。

これは不況時の例外的カルテル容認ということで不況カルテル」といいます。

同時に、業界が不況などで業績不振に陥り、合理化を必要とする場合認められたカルテルを合理化カルテル」といいます。

この不況カルテルと合理化カルテルが1953年の改正で容認されたカルテルになります。

さらに、再販売価格維持制度も導入されました。

この制度はメーカーが決めた価格で、全国一律に値下げをせずに販売する制度のことを指します。

企業の利益を確保するために卸売りや小売り段階で値段変更をするのはダメということです。

書籍や雑誌、新聞、音楽関係に適用されました。

そして日本は高度経済成長を経て、1977年に再び独占禁止法が強化されました

二回目の緩和は1997年です。バブル崩壊後の競争力回復のために緩和しました

この緩和では、資産の上限を設定したうえで持株会社が解禁になります。

コンツェルンがOKとなりました。

「〇〇ホールディングス」というのを会社名で聞いたことはないでしょうか?

これはコンツェルンの親会社で、子会社の株を持つだけで支配する「持株会社」のことなんです。

独占的巨大企業集団だった財閥が復活したといえます。

その結果、中小企業が切り捨てられたり、倒産が相次いだりしました。

それでも大きい企業が活動することによって経済を復活させたいという政府の思いが見えてきますね。

以上、カルテル・トラスト・コングロマリット・コンツェルンを中心に解説しました。

しっかり区別しておさえておいてください。

今回の記事はここまで!

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