【希少性とトレードオフ】

経済分野

どうもminiいけ先生です。

「人々は自分の意志で自分にとって望ましいと思う経済行動をする」と考えるのが経済学でした。詳細記事はこちら。

今回は経済学でも重要な「希少性」「トレードオフ」について考えていきたいと思います。

実は、希少性とトレードオフの概念を理解することで自らの選択の後悔を減らすことができます。

なぜなら、"何をやるか"ではなく、"何をやらないか"を決める思考になるからです。

この記事では、希少性・トレードオフの概念を学ぶことができます。

まずは用語の定義から見ていきましょう。

希少性
欲しいと思う量に比べて利用可能な量が少ない状態のこと
トレードオフ
何かを選択すると、他のものが選択できなる状態のこと。両立できない関係。

希少性が社会全体での価値につながりますが、人はすべてを選択できるわけではありません。

人々が主体的に意志決定をしていくときに「希少性」「トレードオフ」「インセンティブ」が重要なキーワードになります。

今回の記事でわかること

  1. 生産要素
  2. 希少性
  3. トレードオフ
  4. インセンティブ

経済において重要なのは"生産"

経済の定義は以下の通りでした。

経済において基本的な活動は生産と消費です。

特に重要なのは「生産」という財やサービスを作り出す行為です。
生産された付加価値を購入・利用する行為が消費です。

この行為によってお金がぐるぐる回りだします。これが経済循環と呼ばれるものです。

経済活動のスタートになる「生産」は経済活動の源泉とも言えます。
生産活動によって「付加価値」を生み出すために必要なものを生産要素と言います。

この生産要素は3つあります。

1つ目は、生産要素の中でも最も重要なものが人の力である「労働力」です。
労働力とは生産物を作るために費やされる人間の精神的・肉体的な諸能力のこと。
肉体的なもののみならず、知的なものも含みますし、メンタルも重要になります。

2つ目は、事業をするのに必要なものである「資本」です。
"資金"は文字通りお金ですが、"資本"はお金はもちろん機械や工場などを含みます。

3つ目は、「土地」「天然資源」です。
戦国時代には土地が唯一の収入源で、それをめぐる争いも多く発生していました。
経済学でも土地は付加価値を生み出す生産要素としてとらえられます。
資産としては長期にわたり所有できる有形固定資産とよばれます。
天然資源も同じものに分類されます。

これら生産要素の特徴は"限りがあること"です。
人々が手に入れたいと思うぶんだけ生産要素があるわけではないし、生産者すべてが手に入れられるわけではないということです。

現在は3つの生産要素に加えて4つ目に「時間」、5つ目に「情報」が加わり、5つの生産要素として考えることもあります。

「希少性」が価値を生み出す

有限性のある生産要素は希少性のあるものです。

希少性とは、欲しいと思う量に比べて利用可能な量が少ない状態、「社会的な必要性の高さ」を指します。

希少性は需要と供給の大きさで決まります。

水は人間が生活するうえで極めて大切なものですが価格は低いですね。
一方、金(GOLD)は水ほど生活には必要とされないですが価格は高いです。

これは水は皆が必要としても、豊富に供給されているので希少性が低くなり、価格は安くなります。
一方のGOLDが採掘された量は50メートルプール2杯分だけです。供給量が少ないので、ほしい人が多いときは価格が上がります。

希少性があるからこそ、そのもの自体に価値が生まれてくるわけです。

スウェーデンの経済学者G・カッセルは、すべての財・サービスの経済的な価値は、希少性に依存すると考え「希少性の原理」と名付けました。

希少性をもつ財は「経済財」とよばれます。

一方で空気のように、豊富に存在し、誰でも無償で利用できる財は「自由財」とよばれます。

人々は常に「トレードオフ」に直面している

人生は選択・決断の連絡です。

進路選択、就職活動や結婚など大きな選択もあれば、朝起きるという選択をして、歯を磨くという選択をして、朝ご飯を食べるという選択をして、学校に行くという毎日の小さな選択もあります。

ここで重要なのは、何かを得るためには何かを手放さなければならないということです。

特に希少性のあるものに関してはこの傾向が如実に表れます。

例えば「限られているお小遣い」の場合を考えていきましょう。

お小遣い(お金)には希少性があるので、欲しい靴を買うのか、それとも欲しいワンピースを買うのか迷っているときにどちらかを選択しないといけないわけです。

何かを選択すると、他のものが選択できなくなります。

靴を買えばワンピースを買えなくなるし、ワンピースを買えば靴を買えなくなります。

両立できない関係、相反する関係が発生します。
これを経済用語でトレードオフといいます。

人生は常にトレードオフに直面しています。

勉強や仕事において「やること」が多すぎて、飽和状態となり物事が前に進まなくなるときがありますよね。

「何をやるか」を考えて「やるべきこと」を足していくと、結局いろいろなものに手を出す羽目に陥ってしまいます。
その結果、徒労感に苛まれ非効率なことになることが多々あるのです。

物事はすべてトレードオフ。「何かをとれば、何かを失う。」

だからこそ、"何をやるか"ではなく、"何をやらないか"を決めることが重要です。

他の人がやっていることをやらないと不安になりますよね?

やらないことを決めるのはとても勇気のいることですが、「何をやらないか」を決めるために立てるのが戦略です。

ターゲットを絞り、何に特化して何を捨てるのかというマーケティングを考えるうえでも、トレードオフの概念は非常に重要になってきます。

ではここで2題の入試問題を見ておきましょう。2022年共通テスト政治・経済本試から引用しました。

空欄アの周りの文章を読むと「ある土地をすべて駐車場とした場合アの関係から他の用途に利用できない」とあります。
土地を駐車場にしたら、公園や宅地利用ができなくなるのでトレードオフの関係であるといえますね。

一方でこちらは2018年政治・経済センター本試から引用しました。
2022年共通テストの類題になります。

空欄アの周りの文章を読むと「公平性と効率性のアをいかに解決するかが問われている」とあります。
公平性を追究すれば経済効率性が損なわれると前の文章で書かれているのでトレードオフの関係であるといえますね。

トレードオフの意味は入試でも頻出になります。

人の行動は「インセンティブ」によって決まる

経済学では人々が自分の意思で自分にとって望ましいと思う経済活動をすると考えます。

人がトレードオフの中で、主体的な意思決定を考えるときに重要なキーワードになるのが「インセンティブ」です。

インセンティブとは誘因と訳されますが、そのときに人が持っている動機を満足させるもののことです。
インセンティブがあると、ある選択をする意欲が高まります。

例えば、貰える給料が高くなれば、より働こうという意欲が刺激されますよね。
しかし、企業が給料を一向に上げないのに働くことを強制しても、働く側のインセンティブを無視した要求になるので上手くいきません。

人はトレードオフの中で、インセンティブがある方を選択する傾向が強いと考えられています。

最後にもう一度「希少性」「トレードオフ」「インセンティブ」の定義をしっかりとおさえておいて下さいね。
以上今回の記事はここまで!

希少性
欲しいと思う量に比べて利用可能な量が少ない状態のこと
トレードオフ
何かを選択すると、他のものが選択できなる状態のこと。両立できない関係
インセンティブ 
そのときに人が持っている動機を満足させるもののこと

人気記事必読!公共・倫理・政治経済で9割取る方法