【経済成長率と物価指数についてわかりやすく解説】

経済分野

どうもminiいけ先生です。

名目経済成長率と実質経済成長率の違いがまったくわからない。

経済成長率は公式をいっぱい覚えないといけないから嫌だ!という人が多いのではないでしょうか?

実は、この問題はすべて物価変動を理解すればクリアできます

つまり、物価変動を考慮するか、しないかで計算も大きく変わるということです。

この記事では、政治・経済分野でも1、2を争うほど受験生が嫌がる「経済成長率と物価変動」についてわかりやすく解説します。

この記事を読むと他の受験生と差をつけられること間違いなしです。

最後までご覧ください。

今回の記事でわかること

  1. 経済成長率とは
  2. 経済成長と物価の関係
  3. 実質経済成長率とは
  4. 名目経済成長率とは
  5. 実質GDPとは
  6. 消費者物価指数
  7. 企業物価指数
  8. GDPデフレーター

解説動画

何度も復習「フローとストック」

国富(ストック)は、1年間の生産活動の元手になる蓄積された価値です。

この国富は「実物有形資産+対外純資産」という式であらわすことができました。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

付加価値を生み出す生産活動はGNP・GDP・NNP・NIなどのモノサシで測ることができます。

蛇口をひねる量が多かったら生産活動が多いし、逆に蛇口をひねる量が少ないと付加価値が生み出せていないということになります。

金融恐慌や新型コロナウィルスの蔓延などが起きると、この蛇口が固まってしまって全然生産活動ができていない状況に陥るということもあるんですよ。

経済学では、ストックよりもどれだけ付加価値を生み出したかというフローの方が重視されます。

付加価値を生み出すことが、経済では最も大切ということです。

つまり、蛇口をひねる量、生産活動を見ていくということ。

GNPやGDPが前の1年よりも増えてるとその国の経済が成長していると言えるんですよ。

この生産活動が消費と貯蓄に分かれるのでした。

貯蓄というのは、誰かに貸し出されるので誰かの負債でもあります。貯蓄=負債。

結果的にこの貯蓄っていうのは投資の方に回っていき、ストック(国富)となることで生産の元手になるんです。

経済成長率とは

今回のメインテーマは「経済成長率をはかるには?」です。

まずは結論から。

  • 経済成長率=[(本年のGDP −前年のGDP)÷前年のGDP] × 100

GDPが前の年に対して増えたかという割合を経済成長率といいます。

この式に数値を当てはめれば、経済成長率を導き出すことができるんですね。

ではここから丁寧に見ていきましょう。

昨年のGDPが100兆円、今年のGDPが101兆円だったとすると?

[(101兆円-100兆円)÷100]×100=0.01

結果的に昨年よりも1%の経済成長をしたというのがわかります。

昨年のGDPが100兆円で今年のGDPが99兆円だったとすると?

[(99兆円-100兆円)÷100]×100=-0.01

− 1%という結果が出ますが、こちらも「経済成長」と言います。

マイナスという数値が出ても経済成長と言われ、「− 1%の経済成長」ということになります。

経済が成長するにつれて物価も上がる

経済が成長するにつれて物価も少しずつ上昇するということは知っておきましょう。

下のグラフをご覧ください。

1950年と比べると8倍以上物価が上昇しているのがわかりますよね?

景気が良くなれば、モノに対する需要が高まり、物価が上がっていきます。

需要が高まると生産活動が活発になり、給料が上がり消費が活発になる。

このようにして、経済は成長していくわけです。

おじいちゃんがそばを食べながら回想しています。

「タクシーやそばの値段を見ると物価の変動がよくわかる。タクシーに1円で乗れた時代もあった」

経済成長と物価上昇はセットで考えるべきです。

経済成長と物価の関係

経済成長と物価はセットで考えて、両方を見ていきたいところです。

なぜなら、物価だけが上がって経済成長していないケースもあるからです。

たとえば使えるお金が5倍に増えたとしましょう。

使えるお金が5倍に増えたら「やったー!」と思うものです。

物価が変わらない場合、今までの5倍の量の商品が買うことができるので、かなり経済成長したといえます。

けれど、これは「物価が変わらなかったら」というのが前提になります。

たとえば使えるお金が5倍になったけれど、物価も5倍になった場合はどうでしょうか?

物価が5倍になると、使えるお金が5倍になったとしても結局は同じ量の商品やサービスを買うことしかできませんね。

このように物価変動を見ることは、経済成長を見る際にとても重要なのです。

実質経済成長率とは

実質経済成長率は「物価変動を考えて」実際の経済がどれくらい成長したかどうかを見るものです。

先ほどの例で紹介した「使えるお金が5倍になり、物価も5倍になる場合」というのがまさに物価変動を考慮しているものになります。

「使えるお金が5倍になった」だけだと見た目上は成長しているように感じますが、「物価も5倍になった」ということを考えると実際何も変わっていないということですよね。

体重に例えると、昨年に服を着ていない状態で体重が100㎏だった人がいたとしましょう。

今年に入って10㎏の服を着てた状態で体重を測ったら、名目上は110㎏ですよね?

しかし、服を取り除くと実質100㎏のままで変わっていません。

この例えの「服」に該当する部分が「物価」です。

物価を考慮することで本当の経済成長率をみることができると考えるのが実質経済成長率です。

実質経済成長率では、付加価値の増加が物価上昇によるものであった場合は、その変動分を差し引いて考えます。

「物価変動を考慮する」「物価変動ぶんを取り除く」「物価増減分を差し引く」など言い回しはさまざまなので注意してください。

この実質経済成長率は以下の公式で表すことができます。

  • 実質経済成長率=[(本年の実質GDP −前年の実質GDP)÷前年の実質GDP]× 100

重要なのでもう一度。

実質経済成長率では「物価変動を考える」。

名目経済成長率とは

名目経済成長率は、「物価変動を考えず」見た目の経済がどれくらい成長したかどうかを見るものです。

先ほどの例で紹介した「使えるお金が5倍になり、物価も5倍になる場合」で考えていきましょう。

物価変動を考えず、つまり物価変動を見ないで考えると「使えるお金が5倍に増えた」ということだけが残りますよね。

実質何も変わっていないけれど、見た目は5倍のお金が世の中に回ったので「経済が成長した」とも考えることができます。

名目経済成長率では、付加価値の増加がたとえ物価上昇によるものであっても経済が成長したと考えるのです。

「物価変動を考慮していない」「物価変動を放っておく」「物価変動を含む」など言い回しはさまざまなので注意してください。

この名目経済成長率は以下の公式で表すことができます。

  • 名目経済成長率=[(本年の名目GDP −前年の名目GDP)÷前年の名目GDP ]× 100

重要なのでもう一度。

名目経済成長率では「物価変動を考えない」。

実質GDPとは

実質経済成長率を導き出すときに必要な「実質GDP」とは何でしょうか?

GDPとは国内で生産されたモノやサービスの付加価値を表す国内総生産ですね。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

GDPも物価変動の影響を受けます。

本当に付加価値が生み出された結果GDPの数値が上がっているかもしれないし、ただただ物価が上昇しただけで数値が上がったかもしれません。

そこでGDPから物価の変動による影響を取り除き、その年に生産された財の本当の価値を算出したものが「実質GDP」になります。

物価変動を考慮しない名目GDPが増えても実質GDPが増えなければ、経済活動が大きくなったとは言えません。

この実質GDPは以下の計算式で表すことができます。

  • 実質GDP =(名目GDP÷物価上昇率 )× 100

注意すべきは物価上昇率です。

  • 物価上昇率は前年を100として今年度の数字を見る

前年より物価が上昇している場合は100を超える数字になります。

逆にデフレ下で前年より物価が下落している場合は、100を下回った数字で算出されます。

物価指数について

経済成長を見る際に重要な物価を表す指数は主に3つあります。

  1. 消費者物価指数
  2. 企業物価指数
  3. GDPデフレーター

消費者物価指数

消費者物価指数は消費者にモノやサービスがわたる段階での物価をあらわします。

小売り段階、つまり消費者にわたる段階での食品や生活必需品などの消費財やサービスの価格動向を示します。

発表元は総務省です。

企業物価指数

企業物価指数は、企業間で取引される生産財価格の動向をあらわします。

2003年まで卸売物価指数と言われたのですが、名称変更されました。

発表元は日本銀行です。

GDPデフレーター

GDPデフレーターという物価指数は、GDPを構成する消費・投資の個々の数値から計算によって求めます。

発表元は内閣府です。

物価というのは形のある財や形のないサービスの価格を総合化・平均化することによって導き出します。

GDPデフレーターは以下の計算式で表すことができます。

  • GDPデフレーター=(実質GDP÷名目GDP)×100

GDPデフレーターの数字は昨年より物価が下落していれば100より小さくなります。

物価上昇率は前年より物価が上昇している場合は100を超える数字になり、物価が下落している場合は100より少ない数字になります。

たまに、ネット上で紹介されている公式には「×100」がない場合もあります。

×100がない公式を使用する場合は、GDPデフレーターは1を超えるとインフレ、1未満だとデフレということになりますが、資料集や教科書だと「×100」がついているので大学入試レベルに合わせておく方が無難だと思います。

この点は注意しておきましょう。

このグラフはそれぞれの物価指数です。

消費者物価指数と企業物価指数、GDPデフレーターはそれぞれ描くグラフが違いますよね。

見る方向によっては物価の上がり下がりというのも違うということを理解しておきましょう。

物価指数は、消費者を中心に見るのか、企業を中心に見るのか、それとも独自の算出方法のGDPデフレーターを見るのかで数字も大きく変わってきます。

物価変動をふまえて名目経済成長率と実質経済成長率を考える

先に注意すべき点を挙げておきます。

  • 物価が上がるインフレ局面では名目経済成長率が伸びる傾向にある
  • 物価が下がるデフレ局面では実質経済成長率が伸びる傾向にある

まずはインフレ局面、物価上昇の局面について考えましょう。

名目経済成長率は物価変動を考慮しないので、物価が上がったぶんだけ経済成長も加速します。

物価を考慮しない名目経済成長率に対して、実質経済成長率は物価変動を考慮します。

インフレ局面では物価が増加したぶんだけ取り除かれることになるので、名目経済成長率よりも実質経済成長率は伸びにくい特徴があります。

逆に物価がマイナスになるとき、デフレ局面ではどのようになるでしょうか。

物価下落局面では経済成長も鈍化する傾向にあります。

物価変動を考慮しない名目経済成長率は、物価が下落するのと同じように経済成長も下落してしまう特徴があります。

一方で、物価が下落した分を取り除いた実質経済成長率は名目経済成長率よりも高い数値で算出されることが多くなります。

日本の名目経済成長率と実質経済成長率

こちらのグラフは1970年代~2018年までの日本の名目経済成長率と実質経済成長率をあらわしたものです。

名目経済成長率が青色のグラフ、実質経済成長率が赤色のグラフです。

2000年あたりから2000年中盤あたりまで日本はデフレ期です。

デフレ期は物価が低いので、名目経済成長率の伸びが弱く、実質経済成長率の方が高くなっています。

2012年からは、①異次元金融緩和②機動的財政出動③成長戦略という3本の矢を重視した安倍内閣の経済政策、通称アベノミクスがスタートしています。

その結果、経済成長と緩やかな物価上昇で名目経済成長率が実質経済成長率を上回っているのがわかると思います。

しかし、実質経済成長率の伸び率は低いままです。

日本の経済の成長率は平均1~3%程度という低成長が続いています。

やはり、経済成長には付加価値を生み出す力、GDPを生み出す生産性の向上が必要不可欠になります。

各国の実質経済成長率

おもな国の実質経済成長率を見ておきましょう。

やはり注目は中国です。

約10%程度の成長率を誇っていたというのが注目です。

ただし2010年以降は7~8%程度に鈍化しています。

しかし、中国のGDPの算出の仕方はすごく雑だと言われていて、この数値自体があまり信用ならないという話しもあります。

韓国の実質経済成長率も特徴的です。

韓国は1997年のアジア通貨危機で経済成長が急激なマイナス成長となりましたが、IMF(国際通貨基金)が介入したことによってV字回復しています。

あとは、2009年のサブプライムローン問題に端を発するリーマンショックの影響で世界各国の経済成長が大きく落ち込んでいる点も注目しておきましょう。

名目経済成長率と実質経済成長率を公式に当てはめて考える

ここの説明は、混乱を招くかもしれないのでややこしいなと思った人は読み飛ばしてOKです。

ただし、公式だけは確認しておいてください。

  • 名目GDP=実質GDP×GDPデフレーター
  • 実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター
  • GDPデフレーター=(実質GDP÷名目GDP)×100

この計算式のGDPデフレーターの部分が大きくプラスになればインフレです。

インフレのときは物価変動を含む名目GDPが大きくなるので、名目GDP>実質GDPとなります。

GDPデフレーターがマイナスで物価下落となればデフレです。

デフレのときは物価変動を含む名目GDPが小さくなるので、名目GDP<実質GDPとなります。

例①名目GDPが500兆円、GDPデフレーターが104

GDPデフレーターが100より大きいのでインフレ傾向であることがわかります。

実質GDPは(500÷104)×100=480.7兆円となります。

物価上昇中は名目GDP>実質GDPとなることがわかりました。

例②名目GDPが500兆円、GDPデフレーターが96

GDPデフレーターが1より小さいのでデフレ傾向であることがわかります。

実質GDPは500÷96×100=520.8兆円となります。

物価下落中は名目GDP<実質GDPとなることがわかりましたね。

公式一覧と問題演習

今回扱った公式をすべてまとめておきました。

公式や経済成長について理解したところで実戦練習をしていきましょう。

2018年センター追試第4問問3

問題には「物価が変動すると名目経済成長率が実際の経済の成長率を表さないことがある。このことに対処するため実質経済成長率が用いられる。」との記載があります。

問題文だけでもとても勉強になりますね。

2001年の実質経済成長率を①~④から選べ、という問いです。

  • ヒント① 名目GDPが2000年は500兆円、2001年は504兆円に上昇している
  • ヒント② GDPデフレーターが2000年は100、2001年は96に減少しているのでデフレである

実質経済成長率を知りたいので、まずは物価変動を考慮した実質GDPを算出しましょう。

使用する公式は「実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター」。

2000年は名目GDPが500兆円÷GDPデフレーターが100=実質GDPは500兆円です。

2001年は名目GDPが504兆円÷GDPデフレーターが96=実質GDPは525兆円です。

名目GDPは500兆円から504兆円へ4兆円の増加ですが、デフレ期ということもあって実質GDPは500兆円から525兆円に上昇しています。

ここまでわかったら次に使用する公式は「実質経済成長率=[(本年の実質GDP-前年の実質GDP)÷前年の実質GDP]×100」。

[(525兆円-500兆円)÷500兆円]×100=0.05

よって、実質経済成長率は5%成長ということになります。

ヒントをしっかり理解しつつ、2つの公式を駆使すればとても簡単な問題です。

こういった経済成長率の問題は、やり方の基本をおさえておけば複雑な計算ではないので得点源になりますよ。

最後にもう一度、公式一覧を見ておきましょう。

覚えるの大変かもしれませんが、演習で使って慣れていくことが一番大切かなと思います。

実戦あるのみです!

今回の記事はここまで!

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