【難易度高め!企業の種類】
どうもminiいけ先生です。
今回は「企業の種類」について見ていきたいと思います。
企業と会社の違いはわかりますか?
特殊法人と独立行政法人の違いはわかりますか?
今回は4つの経済主体である家計・企業・政府・金融機関のうち「企業」に焦点を当てていきたいと思います。
生産活動を行っている企業は、どのように分類されているのでしょうか?
そして、私たちが知っている「会社」とは何を指すのかを考えていきたいと思います。
難易度の高い分野ですが、難関私大では出題されることもあるので他の受験生と差をつけましょう!
今回の記事でわかること
- 法人・個人事業主・自営業の違い
- 私企業・公企業・公私合同企業の違い
- 私企業の種類
- 公企業の種類
- 公私合同企業の種類
解説動画はこちら【企業の種類】
法人?個人事業主?自営業?
政治分野で学んだように、人には「基本的人権」があります。
同じように企業にも人と同じような権利や義務を持つものがあります。
これを「法人企業」と言います。
法人とは「法」律で認められ、権利・義務を持つ「人」格という意味です。
個人で出資して経営する「個人企業」は法人ではありません。
個人企業は個人事業主やフリーランスと言われる人たちのことを指します。
では、よく聞く「自営業」とは何なのでしょうか?
自営業は会社員以外の方で、自分で事業を営む人に社会的に広く使われる呼称です。
事業を営む上で、法人や個人などにこだわらない場合に、そう呼んだ方が社会的に説明しやすいので浸透していったそうです。
私企業・公企業・公私合同企業
企業は、私企業・公企業・公私合同企業に分かれます。
私企業は民間人が出資し、経営する企業のことを指します。
先ほど示した個人企業と法人企業が該当します。
公企業はその名のとおり国や地方公共団体が所有し、経営する企業のことを指します。
政府が経営する国営企業や、地方公共団体が経営するものがあります。
公私合同企業は、政府や地方公共団体の公の資金と、個人や会社などの民間資金とによって設立された企業のことを指します。
株式会社の形態をとるものが多く、「公私混合企業」とも言われます。
経済の中心である「私企業」
まず私企業から見ていきます。
私企業の目的は「利潤の最大化」です。
この利潤を生み出すために企業は生産活動を行います。
資本主義経済において、企業の中心は私企業になります。
私企業は個人企業と共同企業の2つに分類されます。
個人企業
個人企業は、個人が出資して経営する小規模な企業を指します。
主に個人商店・農家・小規模な飲食店・フリーランスとよばれる自由業者などです。
資本(資金などのお金や機械・工場など)の所有者が、同時に経営権を持っています。
個人企業を経営する個人事業主は、会社員と違って、企業と雇用関係を結ばず、個人で事業を行います。
コストや手間をかけずに起業できるほか、組織に縛られることなく自由に事業を運営できるというメリットがあります。
一方で社会的な信用が得にくかったり、一定以上の所得を得ると税負担が重くなったりするなどのデメリットがあります。
共同企業
共同企業は2人以上の出資で経営する企業のことをいいます。
共同企業は営利法人と非営利法人に分類されます。
営利法人の「会社」
利潤を生み出すために生産活動を行う営利法人は、「会社」といわれます。
従来は、商法、商法特例法、有限会社法など、いくつかの法律に分散されていた法律が会社法に統合されました。
結果的に現在の会社法に規定されている株式会社・有限会社・合資会社・合名会社・合同会社が現在の「会社」になります。
「企業」は、個人企業・共同企業・営利法人・非営利法人など多くを含むのに対して、「会社」は営利法人を指し、該当するのは5つだけになります。
非営利法人
非営利法人は利益を求めない法人のことです。
主に「中間法人」と「公益法人」がこの非営利法人に該当します。
中間法人
中間法人の代表格は組合企業です。
組合企業は「その構成員の間で共有されている相互扶助・問題解決を目的としている組織・団体」のことを指します。
JA(農業協同組合)やCOOP(生活協同組合)が有名です。
JA(農協)は農業経営者や農家が共同して組織します。
安い外国の農作物の輸入制限や、生産者米価の決定などについて政治家に対して、自らの利益を主張する圧力団体として組織されている側面もあります。
非営利法人であるけれど、自らの利益を主張するというのも何だか皮肉です。
COOP(生協)は消費者が資金を出し合って地域などを単位として活動する組織のことです。
日本の地域生協の事業の特徴として、組合員がグループを作って、そこへトラックで配達するという「共同購入事業」が挙げられます。
これは1970年前後に、食の安全性に対する信頼が低下したため、大学生協が中心となって、各地に地域生協が設立する動きが広がり、その中で生まれました。
公益法人
公益法人は「公の利益のために」存在するものです。
①一般財団法人
一般財団法人は特定の個人や企業などの法人から拠出された財産で設立されます。
有名なのが公益財団法人の日本相撲協会です。
②社団法人
社団法人は法人の形態の1つで、共通の目的を持って集まった非営利団体のことです。
〇〇学会や〇〇協会などが該当します。
他にも学校法人や宗教法人も公益法人に該当します。
③NPO法人
注目ポイントはこのNPO法人です。
NPO(Non-Profit Organization)法人は、利益を追求することなく、社会に有用なサービスを提供する民間の組織です。
1998年にNPO法(特定非営利活動促進法)が制定されました。
この法律は、ボランティアや社会貢献などの市民的活動を行う団体に法人格を与えて活動を促進する目的で制定されました。
法律が整備されたことによってNPO法人も設立しやすくなっています。
このNPO法人で試験での頻出は以下の4点です。
- 利益を出してもよい(従業員の給料あり)
- 税の優遇がなされる
- 寄附を受け取ってよい
- NPO法人になる義務はない
Non-Profit Organizationって言っても、利益を出さなかったら運営ができません。
なので利益を出してもいいんです。
加えて、NPO法人に勤めているからといって給料が出ないといったらそんなことはありません。
従業員に給料の支払いはあります。
NPO法人は税の優遇がなされます。
NPO法人は、大規模災害時の支援活動や社会福祉の分野で多岐にわたる活動を行っています。
特定非営利活動に関連する所得に法人税はかかりません。
ただし、収益事業に関する所得には課税されます。
株式会社等に適用される税制よりは優遇されますが、すべての税金が免除または優遇されるというわけではないので注意してください。
NPO法人に対して寄付がなされた場合、その寄附を受け取ってもOKです。
個人もNPO法人へ寄附をした場合、税制上の優遇措置を受けることができます。
ボランティア活動や社会福祉活動をしている団体がNPO法人にならないといけないのかと言ったらそうではありません。
問題文に「NPO法が制定されたことによって、NPO法人になることが義務付けられている。」
といった選択肢がみられることもありますが、それは間違いなので選ばないようにして下さい。
NPO法人は、Non-Profit Organization利益を追求することなく社会に有用なサービスを提供する組織のことです。
NGOはNon-Governmental Organization、政府に作られた組織ではない、非政府組織のことです。 アムネスティインターナショナルや地雷禁止国際キャンペーンなどがこれに該当します。
NPOとNGOは必ず区別をしておいてください。
難易度高め!「公企業」
公企業はその名のとおり国や地方公共団体が所有し、経営する企業のことを指します。
政府が経営する国営企業や、地方公共団体が経営するものがあります。
国営企業
もともとの四現業(よんげんぎょう)と呼ばれるものが国営企業に該当していました。
四現業とは郵便・国有林野・印刷・造幣などです。
ただし、ほとんどが民営化され、2013年には国有林野事業の国営化も廃止されました。
そのため現在、国営企業は存在しません。
「小さな政府」の流れが加速していると言えます。
地方公営企業
地方が運営しているのが地方公営企業です。
交通・水道・ガス・市営されているものなどが挙げられます。
プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)という民間の資金やノウハウを生かした公企業というものも存在します。
民間資金を活用した公的施設の建設や維持管理を積極的に行うためにPFI法が制定されています。
また、「指定管理者制度」とよばれる地方自治体の公共施設を指定された民間企業やNPO法人などが管理・運営していく制度も導入されています。
その代表例が、「TSUTAYA図書館」です。
飲料物の持ち込みを許し、音楽を小さく流す。
休館日を極力減らし、開館時間を夜間まで延長する。
座り心地の良い椅子を用意し、また直感的に手に取りやすい形で本を並べるなどの工夫がなされています。
2013年の佐賀県武雄市を初めとして、以降、2014年、2016年、2017年に神奈川県海老名市、宮城県多賀城市、岡山県高梁市に造られ、話題になっています。
PFI制度は地方活性化において非常に大きな役割を担っています。
特殊法人
特殊法人は、儲からないけど国にとって必要な仕事をする法人のことです。
特別の法律によって設立されています。
民間ではできない事業を行う団体のためさまざまな特権があります。
主な特権は以下の2つです。
- 法人税や固定資産税等が免除されている
- 資金の足りないぶんは国が用意する(財投債)
こういった特徴から、財政を圧迫する原因にもなってきました。
小泉純一郎内閣で2001年から特殊法人改革が実施され、163もの特殊法人が改組・廃止されました。
特殊法人は、「公庫」「公団」「公社」などが該当します。
公庫は公共の目的で融資を行う公的金融機関です。
国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫などがありましたが、政府系金融機関の株式会社日本政策金融公庫に改組されました。
現在、公庫として存在しているのは沖縄振興開発金融公庫のみになります。
公団は国家的事業・公共事業を実施する機関です。
こちらも2001年の特殊法人改革によってすべての公団が独立行政法人あるいは特殊会社(株式会社)に改組されることとなりました。
2005年の日本道路公団民営化の民営化は業界を震撼させました。
公団から民営化されたことによって、高速道路各社は建設や管理コストの縮減などで経営の合理化を進め、いわゆる借金の返済も順調に進んでいます。
しかし、一方で民営化による黒字追求の結果、2021年に入り首都高の値上げが発表されるなど競争原理が高速道路利用料金に転化されています。
利用者は世界的に見ても高い高速料金の負担を強いられている状況が続いています。
公社は独立採算制をとり、国の全額出資によって設立される公共事業体とのことです。
いわゆる「三公社」がこれに該当しました。
三公社は日本専売公社・日本電信電話公社・日本国有鉄道のことです。
この三公社は中曽根康弘内閣のときに民営化されました。
2003年には日本郵政公社が創設されたのですが、いわゆる「郵政解散」で衆院選に圧勝した小泉純一郎内閣のもと2007年に郵政公社も解体、民営化されました。
現在、公社は地方公共団体によって設立され、公共事業を行う特殊法人のことを指します。
現存する特殊法人
特殊法人は民間ではできない事業を行うため、法人税・固定資産税の免除や国の資金を調達できるなど特典を与えられているのですが、その採算性の悪さや、官僚との太いパイプによる「天下り問題」が批判されています。
小泉構造改革により、多くの特殊法人が改組・民営化されましたが、2009年にも60法人を廃止・民営化して約2兆円の支出削減がなされています。
現存する特殊法人は以下の通りです。
- 日本私立学校振興・共済事業団
- 沖縄振興開発金融公庫
- 日本中央競馬会(JRA)
- 日本放送協会(NHK)
- 日本年金機構
独立行政法人
独立行政法人は、国から独立して行政上の仕事を行う法人です。
公的要素と民間手法が混合しています。
そのため、職員が公務員である特定独立行政法人と呼ばれるものもあれば、職員が公務員でない独立行政法人もあります。
特殊法人と異なる点は以下の2つです。
- 法人税や固定資産税などを支払う必要がある
- 資金は自ら調達しなくてはならない(ただし、国から運営交付金の予算がついている)
独立行政法人は、運営資金は自ら調達するとありますが、実際は国からの運営交付金という予算がついています。
独立行政法人も特殊法人と同様に、各省庁の請負事業や官僚OBの天下り先として使用されることもあって、不正が横行していました。
2012年に行政刷新会議(民主党政権の時に創設・2012年廃止)で102の独立行政法人を65に統廃合すると表明されました。
その表明には届いていませんが、2022年現在、87の独立行政法人があります。
全体的な流れとしては独立行政法人の民営化が進んでいることは理解しておいて下さい。
現存する独立行政法人の代表的なものは以下の通りです。
- 国立印刷局
- 国民生活センター
- 大学入試センター
- 日本スポーツ振興センター
公私合同企業
公私合同企業とは、政府・地方公共団体の資金と民間資金で設立され、株式会社の形態をとります。
第三セクター
公私合同企業の代表的なものが「第三セクター」です。
セクターとは「区切り」とか「分類」という意味です。
第一セクターは国・地方公共団体を指します。
第二セクターは民間企業を指します。
第三セクターは国・地方公共団体と民間企業の両方が出資しているものを指します。
半官半民で公共事業を行うのですが、そのなかでも地方公共団体の出資が25%以上のものを指します。
岩手県の三陸海岸沿いを走る三陸鉄道や、大阪の鉄道でも第三セクターのものが見られます。
特殊会社
正式名称は「特殊法人たる特殊会社」です。
これは特殊法人とほぼ同義ですが、民間の出資もされている点が異なります。
国策上必要な公共性の高い事業ではありながらも、行政機関が行うよりも、民間でこれを行う方が適切だと判断される場合に設立されます。
その多くは特殊法人が民営化されたものです。
公共性の高い事業のため、各省庁の管轄下に置かれます。
代表的な特殊会社の例は以下の通りです。
- NTTグループ(総務省管轄)
- 日本郵政グループ(総務省管轄)
- 日本たばこ産業株式会社(JT)(財務省管轄)
- JRグループ(国土交通省管轄)
- 高速道路会社(国土交通省管轄)
NHKやJRAは特殊法人になりますから少し違うので注意して下さい。
認可法人
認可法人を設立する時には、大臣の許可が必要な法人になります。
民間の法人とは異なり、特別法により運用されます。
特殊法人とほとんど同じものもあり、複雑になっているので整理対象にもなっています。
代表的な認可法人は以下の通りです。
- 日本銀行(財務大臣の認可)
- 日本赤十字社(厚生労働大臣の認可)
以上、企業の種類はかなり難易度高めでした。
特に特殊法人と独立行政法人のところはややこしいんで、しっかり復習しておいてください。
今回の記事はここまで!