【景気循環と4つの波】
どうもminiいけ先生です。
今回は景気循環について見ていきたいと思います。
景気とは売買や取引などに現れる経済活動状況のことです。
景気とは一言で言えば経済活動の勢いのことであり、その動きが様々な指標に表れます。
経済活動全体の水準である景気は循環しています。
お金はぐるぐる活発に回るときもあれば、そうでないときもあります。
今回は景気循環とは何か、何が原因で景気循環が起きるかを考えていきたいと思います。
今回の記事でわかること
- 景気循環論
- 景気循環の周期
- キチンの波
- ジュグラーの波
- クズネッツの波
- コンドラチェフの波
- 技術革新とは
解説動画はこちら【3つの経済主体と経済循環】
景気循環論
景気の「景」という字には、景色、眺め、状況などという意味があり、経済活動の様子や実際の状況を指します。
一方、「気」はすなわち「心」であり、企業経営者の心情(企業マインド)や消費者の心情(消費者マインド)を指します。
英語で景気を表す言葉は「ビジネス・コンディション」であり、企業業績の良し悪しなどビジネスの状態が良好か否かということが景気の状態を示すものとも考えられます。
4つの経済主体の中でお金のやりとりが活性化すれば、景気が良い状態になります。
モノの販売やサービスの利用状況、企業収益や設備投資、雇用者数や個人所得などが増加していきます。
この状態を好況(好景気)といいます。
逆に、お金のやりとりが少なくなった場合は景気が悪い状態といえます。
経済活動が不活発になり停滞していくのです。
この状態は不況(不景気)といわれます。
景気というのは循環していて良い時もあれば、悪い時もあります。
景気が一定の原因により決まった周期で恒常的・法則的に循環すると考える説を、景気循環論と言います。
景気循環の周期
上の図は景気循環の周期です。
横に点線のラインがあります。
この線を「0(ゼロ)線」と言います。
前期比ゼロになったとすれば、経済成長率はゼロになります。
0線を境にお金が良く回っていて、経済成長している状態を好況(好景気)といいます。
0線を境にお金が全然回らず、景気が悪い状態のことを不況(不景気)といいます。
もう一つ縦のラインを引いておきました。
0線から好況が始まって、不況を抜け出した0線までが1つの経済循環です。
矢印が少しでも上に向いていれば回復といいます。
景気回復局面ではモノやサービスの消費が増えるため、企業は生産を増加させます。
やがて景気が山(ピーク)を超えると、後退します。
景気のピークから0線に向かっていくのも好況時ですが後退、0線以下の谷に向かっていく不況時のものも後退となります。
景気後退局面ではモノが売れなくなるため、企業は在庫調整を進めながら生産を控えます。
さらにモノが売れなくなると、企業は販売価格を引き下げて需要を喚起するため、モノの値段は下落することになります。
不況から景気上昇に向かう転換点を「景気の谷」といいます。
景気が谷を迎えると、次第にまたモノが売れはじめ、消費が拡大して景気は回復します。
不況期にも矢印が上に向く回復期があります。
景気は、景気上昇(回復)⇒好況⇒景気後退⇒不況⇒景気上昇(回復)を繰り返します。
景気循環をあらわす「4つの波」
景気循環はその要因や周期の長さによって次の4つに分類することができます。
ただし、さまざまな要因が影響することから周期は、必ずしも一定性はありません。
ここは必須中の必須ですから必ず覚えてください。
キチンの波
まず1つ目がキチンの波。
「チキン」ではないですよ!チキンは鳥とか意気地なしの人を指します。
キチンさんというアメリカの経済学者が発見した景気循環のため「キチンの波」と言われます。
キチンさんが発見したキチンの波は景気循環の波動が比較的短めです。
周期が3~4年、40ヶ月程度の周期で好不調を繰り返すという景気循環です。
このような波動になるのは、企業の在庫投資の増減が要因だとキチンさんは考えました。
短期的な景気循環であるキチンの波は、企業の短期的な生産計画と消費者の短期的な購買計画との関係によって起こります。
例えばスーパーやデパートなど小売店の仕入れについて考えましょう。
小売店は毎日メーカーなどから品物を仕入れているわけではありません。
景気がよければ、たくさんの商品を仕入れて在庫をストックしています。
一気に仕入れる方がコストが安く済むからです。
ところが売れ行きの読み違いをしたり、景気が後退して思ったより商品が売れないことがあります。
このように在庫が余る時は、小売店は仕入れを控えて、在庫が減るのをじっと待ちます。
小売店が仕入れを控えたら、メーカーたちの売り上げも急激に減ってしまいます。
小売店やメーカーなどの生産者側(供給者側)が原因になり、そこから派生して世の中のさまざまな経済活動に影響し、景気が上昇したり後退したりする。
これが経済学者キチンが発見したキチンの波です。
ジュグラーの波
2つ目がジュグラーの波です。
これも経済学者ジュグラーさんが発見した景気循環のため「ジュグラーの波」と言われます。
ジュグラーの波は7~10年の周期の中期波動です。
キチンの波よりは長期に好不調を繰り返します。
このような波動になるのは、設備投資の増減が要因だとジュグラーさんは考えました。
景気循環のなかでも基本的な循環と言われていて、主循環といわれます。
例えば、ほとんどの企業が導入している機械について考えましょう。
機械設備の寿命は大体10年ぐらいと言われています。
高額な設備を新しくした場合、ローンを組んだり、メーカーの大きな売り上げにつながったり、その費用を回収するために企業が稼働率を上げたりします。
設備投資の増減をきっかけに、物価・金利・生産量などにも影響があり、景気が上昇したり後退したりする。
これがフランスの経済学者ジュグラーが発見したジュグラーの波です。
クズネッツの波
3つ目がクズネッツの波です。
経済学者クズネッツさんが発見した景気循環のため「クズネッツの波」と言われます。
クズネッツの波は15年から20年の中期波動の景気循環です。
ジュグラーの波よりやや長い波動の景気循環になります。
ここはしっかりと区別しておいて下さい。
このような波動になるのは、住宅・建築投資の増減が要因だとクズネッツさんは考えました。
景気循環の15~20年は住宅・建築投資の耐用年数です。
住宅の買い替えは大体15年から20年、それをきっかけに家具や家電を買い替えたり、引っ越しをしたりしますよね。
住宅・建築投資の増減をきっかけに起きる経済波動がアメリカの経済学者クズネッツさんの発見した景気循環です。
コンドラチェフの波
4つ目が最も重要なコンドラチェフの波です。
ロシアの経済学者コンドラチェフさんが発見した景気循環のため「コンドラチェフの波」と言われます。
コンドラチェフの波は約50年の長期波動で「大循環」です。
この長期で大きな景気拡大が起きるのは「技術革新(イノベーション)」が大きな役割を果たしたとコンドラチェフは考えました。
生産や流通のあり方を根底から革新していくイノベーションが起きた場合、50年の長期波動が起きるのです。
コンドラチェフはこれまで4つの長期波動があったと考えました。
初めての長期波動は、産業革命による蒸気機関の発明です。
2回目の長期波動は電信・鉄道の発明、第二次産業革命です。
3回目の長期波動は電気・自動車・化学です。
そして4回目の長期波動は2000年あたりからの、IT・原子力・航空宇宙原子力です。
現在、この4回目の波が終わりに差しかかっているといった見方や、現在も第4波が続いていて、これから「ライフサイエンス、人工知能、ロボット」が牽引する第5波が来るといった見方があります。
イノベーションには「創造的破壊」
オーストリアの経済学者シュンペーターは『経済発展の理論』を著しています。
そこで「技術革新(イノベーション)は経済発展を作り出す」「イノベーションの担い手は生産者だ」という言葉を残しています。
先生の好きな言葉はこのシュンペーターが提唱した「創造的破壊」です。
この創造的破壊は、イノベーションが古い経済や経営体制を破壊し、新たな経済発展を生み出すという意味です。
これは、古い考え方を全否定してるわけではありません。
新しいものを生み出そうと思ったら、古いものを知らないといけません。
「温故知新」です。
新しい発展のために「過去に学ぶ」姿勢は非常に大切なことです。
過去を学び、現在のシステムに疑問を持ち、新しいものを生み出す。
これを「創造的破壊」ととらえると、とてもクリエイティブで素敵だなと感じています。
生産者・起業家による創造的破壊が経済を発展させていくのです。
最近の技術革新の主役は知識集約型産業と言われています。
知識集約型産業とはエレクトロニクス・バイオテクノロジー・R&D・ITなどです。
R&Dは研究開発という意味で、企業もこの研究開発費にお金をかけないと時代に取り残されてしまう可能性があります。
最後にシュンペーターは『経済発展の理論』の中で、このようにも言っています。
「イノベーションは大事。しかし、やがて技術革新を想像する資本主義精神は衰えて資本主義は安楽死すると考える」
技術革新も限界を迎えると考えたシュンペーター、これからの資本主義経済はどこに向かっていくのでしょうか?
以上、今日はここまで!