【資本とはお金だけ?否!資本の種類を解説】

経済分野

どうもminiいけ先生です。

「現在の日本の経済システムは?」と聞かれたらあなたは何と答えますか。

大半の人が「資本主義経済」と答えてくれることでしょう。
(ここで社会主義!と答えた人は思想強めです笑)

資本主義とは資本が生産活動の主体となっている経済体制を指します。

では「資本」とは何でしょうか?

この記事では、多くの人が意外と定義をしっかり理解していない「資本」について学んでいきたいと思います。

この記事を読み終えると、これ以降も経済分野で出てくる「資本」という言葉にアレルギー反応を示さなくなりますよ。

最後まで見ていただけると嬉しいです。

今回の記事でわかること

  1. 資本の定義
  2. 「資本」と「資産」の違い
  3. 「自己資本」と「他人資本」の違い
  4. お金以外の資本(可変資本・不変資本・固定資本・流動資本・人的資本・商品資本・6つの資本)
  5. 規模の利益(スケールメリット)
  6. 集積の利益

解説動画はこちら【会社の種類(前半部分が資本について)】

資本=事業活動の元手となる資金

3つの経済主体のうち企業は生産活動を行います。

この付加価値を生み出す生産活動に必要なものが生産要素です。

この生産要素は労働力・資本・土地を指します。

近代経済学において資本は、労働力・土地と並ぶ生産要素の一つとして定義されていて、生産活動を行うために欠かせない要素です。

特に生産活動をスタートさせる際に、重要になります。

生産活動を行うために企業は、資金を調達する必要があります。

その資金を元手にして、労働力や設備、土地に投資していくきます。

一般的な意味での資本は、事業活動の元手となる資金のことを指します。

基本的には「資本=事業スタートの資金」と思っておきましょう。

「資本」と「資産」は違う

資本は「事業の元手になるお金、企業運営の元になるお金」のことを指します。

300万円のお金で企業Aが事業をスタートさせた場合、企業Aの資本は300万円になります。

一方で資産は「個人や会社が持つ換金可能な財産全体」を指します。

たとえば、現金・有価証券(株や債券など)・土地などの財産が資産になります。

さきほどの300万円で事業をスタートさせた企業Aが、もともと株式や国債など700万円ぶんを所有しているとした場合、企業Aの資産は現金300万円と有価証券700万円を足した1000万円になります。

資産と資本の関係を表す式は「資本=資産-負債」で成り立ちます。

資本の調達方法=自己資本・他人資本

企業は付加価値を生み出し、利潤を最大化させることを目的とします。

付加価値を生み出すためには、事業スタートの「資本」が必要です。

資本はどのように調達すればいいのでしょうか?

自ら働いて貯金をした資金で事業をスタートさせるのもいいですが、応援してくれる投資家たちがいると心強いですよね。

投資家たちはその企業が成長することを見込んで、資本を渡します。

企業が「その資本を確かに受け取りましたよ、あなたがオーナーですよ」という証明書を発行します。これが株券です。

自ら用意した資本や、投資家の株券購入によって企業自らが調達した資本は「自己資本」といいます。

この自己資本は自ら調達したので返済不要であるという特徴があります。

企業は自己資本によって付加価値を生み出すビジネスを展開し、利益を生み出していきます。

企業内部に積み立てれられていった利益のことを「内部留保」といいます。

日本では2021年企業の内部留保が9年連続で過去最高を更新しました。
前年度比2%増の484兆円となっています。

毎日新聞 2021/11/17 東京朝刊より引用

この貯め込んでいる内部留保は企業自身の資本ですね。
なので「自己資本」に該当します。

自己資本=返済不要な資金  ex.株式・内部留保など

この返済不要な自己資本に対して、必ず返済しないといけない資本が「他人資本」です。

たとえば銀行から借り入れたものや、投資家から株式ではなく借り入れたものなどがあります。

銀行が企業にお金を貸すことを「融資」といいます。

企業が資金を投資家などから借り入れるために発行する債券は「社債」といいます。

他人資本はあくまでも他人からお金を借りたものなので、返済が必要になります。

他人資本=返済義務のある資金  ex.銀行からの融資・社債など

これら自己資本と他人資本合わせた資本を別名で、「貨幣資本」ともいいます。

お金以外の資本

資本は貨幣資本以外にも可変資本・不変資本・固定資本・流動資本・人的資本・商品資本などがあります。

可変資本

可変資本とは労働力そのもののことを指します。

賃金で雇われる労働者は、新たな価値を生み出すための生産要素である「労働力」です。

企業は労働市場から労働力を購入します。

この購入された労働力が、それ自身の価値をこえた付加価値を生み出すことがあります。

たとえば、月給30万円の労働者が100万円の契約を成立させるなどです。

労働者自身の価値を超えた付加価値のことを剰余価値といいます。

この剰余価値は、資本の所有者である資本家の儲けの源泉になります。

しかし、月給30万円の労働者は100万円の契約を成立させることもあれば、まったく契約を取ってこないときもあるでしょう。

このように労働力というのは価値の大きさがその都度変わります。

可変資本はマルクス経済学の概念で、労働者の給料、すなわち労働力そのものののことをいいます。

不変資本

その都度価値の変わる労働力のことを可変資本というのに対して、不変資本というものもあります。

こちらもマルクス経済学の概念です。

機械・工場・原燃料などの生産手段がこれに該当します。

たとえばシャツをつくる労働をしたとしましょう。

布、糸、針で400円かかるとします。これらは1回ですべて消耗すると仮定します。

縫い上がって完成したシャツは1000円になっていました。

「布、糸、針」トータル40円が「縫い上がったシャツ」1000円になったのはそこに人の手(労働)が加わっているからです。

600円分が労働によって新たに生み出された価値です。

600円のうち350円は労働者に渡されたとしましょう。
これは労働者の給料なので可変資本ですね。

250円は儲けとして資本家が受け取ります。
これが剰余価値になります。

最初の「布、糸、針」の価値400円はそのまま「シャツ」の中に転化されました。

これら原材料は、生産過程においてそのままの価値で、そのまま生産物に転化されます。これを不変資本といいます。

つまり、不変資本は、生産手段である原材料・燃料・機械・道具などを指すということです。

不変資本だけでは新たな価値は生まれません。

可変資本である労働力と合わさって付加価値は生まれるのです。

可変資本と不変資本を合わせて「生産資本」ともいいます。

固定資本

ここは重要です。

固定資本とは機械や建物、設備に投下される資本を指します。

マルクス経済学では固定資本は不変資本の一部を構成すると考えます。

固定資本は何回かの生産過程にわたって機能し、その価値を徐々に生産物に転化します。

1回の投資でしばらく使えるということです。

機械や工場などは1度投資すれば、10年~20年は使えます。

この10年~20年にわたって、機能し付加価値を生み出していくことのできるものが固定資本です。

建物・機械・車両などの固定資本は、付加価値を生産するうえで利用され、摩耗や年月の経過による老朽化・ 陳腐化によりその価値が減少します。

これを固定資本減耗といいます。

この用語は国民純生産(NNP)を求める計算式の際に出てくるので注意して下さい。

NNP=GNP-固定資本減耗

流動資本

固定資本に対して、流動資本は原材料や労働力に投下される資本を指します。

先ほど紹介した可変資本と不変資本を合わせたものが流動資本です。

こちらは生産のたびに投資が必要になります。

固定資本が1回の投資で固定的にずっと使えるのに対して、流動資本は生産のたびに流動的に投資が必要です。

人的資本

労働力は可変資本・流動資本です。

労働力である従業員が身につけた技能、資格、能力といったものを資本とみなして投資の対象とする考え方を「人的資本」といいます。

一昔前まで労働力は人件費=コストとして、消費していくものとして考えられてきました。

一方で、人を長期的な観点で経営にとって必要な資本として投資するものであるとしているのが人的資本です。

商品資本

企業は資本を調達し、それを使って「商品資本」と呼ばれるものを生産し、利潤を拡大していきます。

商品は形のあるものをさす「財」や形のないものさす「サービス」どちらも含まれます。

企業は商品資本を販売することによって、再び貨幣資本を入手し、さらに投資することで付加価値である商品資本を生み出していきます。

6つの資本

企業などの価値を長期的に高め、持続的投資を可能にする新たな会計基準の確立に取り組む非営利国際団体であるIIRCは6種類の資本を挙げています。

規模の利益(スケールメリット)

ここまで多くの種類の「資本」を見てきましたが、すべてに共通するのは「事業をするのに必要な元手」ということです。

投下資本、いわゆる元手を回収して上乗せの利益を生み出していくのが企業の生産活動です。

その生産が今までの規模よりもはるか大きく拡大していけば、拡大再生産(資本の集積)といわれます。

もし事業が失敗して生産が縮小した場合は縮小再生産といいます。

利潤も損失も出ずになんかトントンみたいな規模で継続しているのは単純再生産といわれます。

そして頻出なのが「規模の利益」です。
規模の利益は「規模の経済」「スケールメリット」ともいわれます。

これは大規模な生産を行えば、利益が大きくなるということです。

たとえば、1時間で100枚シャツを作れる機械があったとすると、この機械をもう一台買うと1時間で200枚シャツを作ることができます。

大規模な生産を行えば供給量が増えるので、シャツ1枚あたりの値段が安くなります。

企業が生産規模を大きくして大量生産を行い、原材料の大量購入によって1つあたりの生産費用(コスト)を低くすることで、より多くの利益が出るといった具合です。

規模の利益の実例は、ユニクロが挙げられます。

ユニクロを運営するファストリテーリング社は世界で3600以上の店舗を持っています。

企画、製造も行う企業として有名ですが、自社ですべて行えるだけの規模があります。

これだけの仕組みがあれば、生産規模を大きくすることができますね。

生産規模が大きくなれば、原材料の大量購入によってコストが低くなり、商品も安く販売することができるので、多くの利益を得られることになります。

規模の利益を表したのが下のグラフです。
これをシルバーストン曲線といいます。

横軸を生産量、縦軸を平均費用とした場合、生産量を増やしていけばいくほど、どんどん費用が下がっているのが分かります。

グラフでいうと生産量Q2あたりまでコストが下がっています。

これは技術革新や資本力の増加、巨額投資などで「生産の集中」を行うからコストを下げられるということなんです。

もう一つ「規模の利益」の特徴が、自然独占が発生し、ライバル会社が参入しづらくなるということです。

一部の企業が生産を集中させてしまうので、独占的になればコストも下がっていくし、生産量も増えていきます。

ライバル会社は、すでにコストを抑えている企業と競争することになるため参入を躊躇します。

逆に、規模の利益のデメリットは、初期投資が増大であるということが挙げられます。

大量生産できる機械などへの初期投資が莫大なものになるケースも多々あります。

初期投資を回収できるよう、バランスを取らないと大きな赤字となるケースも考えられます。

また、規模を拡大しすぎると増産のための新たな設備やスタッフなどが必要になり、コストがあがります。

これを「規模の不経済」といいます。
グラフでいうとQ3あたりから費用が増大しています。

「規模の経済」を狙った事業拡大を計画する際は、機械の許容量と受注のバランスをよく理解することが大切です。

集積の利益

規模の利益から、資本が特定地域に集中して投資されることがあります。

一定の地域に企業が集中して立地することによって、莫大な利益が発生したり、コストが削減されたりすることを「集積の利益」といいます。

石油化学コンビナートはその典型例になります。

コスト削減・莫大な利益を生み出す反面、集積の不利益を発生させることもあります。

石油化学コンビナートの場合、地域の環境を悪化させることが挙げられます。

以上、資本の種類とその投資による効果をみました。

このようにみると「資本」について分かっているようで分かっていなかったと思います。

しっかり復習しておいてください。

今回の記事はここまで!

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